好きなアニメ映画

個人的にお気に入りのアニメ映画を紹介するコーナーです。


最近は古いアニメ映画、世界のアート・アニメーションへの興味が湧いていました。
私はかつては、そこまでアート・アニメーションに関心があるほうではありませんでしたが、普通のアニメや他愛ない娯楽作品への興味が失せている今になって、芸術作品の素晴らしさがしみじみと感じられるようになりました。


まあアート・アニメーションと言ってもいろいろあって、芸術性・実験性のほうが強くて物語性が薄い作品に関しては、やっぱり苦手だなと思います。
最近観た中では、ノーマン・マクラレン、ライアン・ラーキン、ドン・ハーツフェルト辺りの作品はちょっと苦手でしたね。


今回は好きなアニメ映画を10作品紹介します。
もちろん10作品だけじゃ好きなものを全部紹介しきれないので、今後もこのコーナーをシリーズ化して、第2弾以降も作っていければいいんでしょうが、現時点では第2弾を作る予定はありません。
まあよっぽど気が向いたら作るかも知れません。


今回は前世紀の古い作品が中心です。
今世紀の好きな作品は、以下の記事に紹介していますので、参考にしてみてください。
21世紀アニメ映画30選 - yukimuraのメモ帳
それでは参りましょう。



①『空の桃太郎』(1931)
日本のアニメ作家・村田安司の代表作。
村田安司は日本のアニメ界において先駆的存在と言われています。
手法は当時の日本で主流の切り絵アニメですが、彼の作る切り絵は非常に滑らかで動きも楽しいです。
教育用のアニメーションを多く制作し、本作は日本の昔話のヒーローである桃太郎の一行が現代に登場し、戦闘機に乗って荒鷲退治をします。
荒鷲の元に辿り着くまでに2回ガソリンを補給しなければならないという設定がリアルで、ガソリン補給の場面はユーモアに溢れていて大好きですね。
荒鷲退治の場面も見応えあり面白いです。
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➁『くもとちゅうりっぷ』(1943)
日本のアニメ作家・政岡憲三の代表作。
政岡憲三は日本のアニメ黎明期に多大な貢献をしたことから「日本のアニメーションの父」と呼ばれています。
ブログで本作的にアニメを観始めた頃に初鑑賞した作品ですが、今回再鑑賞してより一層感銘を受け、その芸術性と叙情性に惚れ惚れしました。
それまで、切り絵アニメが主流だった日本のアニメとしては、初のフルセルアニメーション作品で、圧倒的に動きが滑らかです。
てんとう虫の可愛さ、蜘蛛の胡散臭さ、癖になる歌唱、嵐の場面の激しさ、雨上がりの美しさ…。
どこを取っても素晴らしいです。
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③『皇帝の鶯』(1948)
チェコスロバキアの人形作家イジートルンカの代表作。
原作はアンデルセン童話『小夜啼鳥』。
作中には台詞やナレーションは一切なく、映像と音楽のみで物語が綴られます。
台詞が無いので、集中して観ないと置いてきぼりを食らいますが、私はサイレント映画を観るのも好きなので、こういう作品を観て映像言語の理解力を養うのも好きですね。
人形の顔は変わらないですが、カメラアングルとライティングにより表情・心情を浮かび上がらせる手腕は見事です。
温かみを感じる人形の動きも素晴らしいです。
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④『幽霊船』(1956)
日本のアニメ作家・大藤信郎の代表作。
戦前は切り絵アニメを手掛けてきた大藤信郎ですが、戦後は影絵と色セロファンを用いた独自のアニメーションを制作し、日本のアニメ作家としては初めて国際的な評価を得る存在となります。
豪華客船が海賊船に襲われ、男たちは勇敢に戦うも殺され、女たちも自決、船員も皆殺しにされます。
しかし、殺された人々は幽霊となって海賊船に現れ、幽霊に取り憑かれ錯乱した海賊の首領は、部下たちを皆殺しにし自分をも殺してしまう…。
艶かしく動く影絵、セロファンによる色彩の鮮やかさ、まさに夢幻の世界に誘われるようです。
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⑤『わんぱく王子の大蛇退治』(1963)
制作・東映動画、監督・芹川有吾のアニメ映画。
日本神話のスサノオヤマタノオロチ退治を題材に、子供向けのファンタジー作品に仕上げています。
明快な娯楽作として、冒険・活劇の面白さも申し分ない作品ですが、そのアート的な画面も見所であると思います。
色彩にグラデーションを用いる他の作品とは違い、平板なベタ塗りを採用しながら、そのグラフィカルな画面作りには強い芸術性が感じられます。
全体的に動きが非常に滑らかで、特にクライマックス、スサノオがアメノハヤコマに跨がってヤマタノオロチと戦う場面は、作画枚数1万枚を超えているようです。
伊福部昭によるダイナミックな音楽も素晴らしいです。
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⑥『霧の中のハリネズミ』(1975)
ロシアのアニメ作家ユーリー・ノルシュテインの代表作。
今回再鑑賞しましたが、これほど凄い作品だったとは…。
1回目の鑑賞よりも一層素晴らしく感じられ、掛け値なしに素晴らしい作品であると断言できます。
ハリネズミが霧に包まれた世界を探検し、そこで様々な体験をする…。
お話のアウトラインはごく単純なもので、上映時間10分の短編映画です。
しかし、そこに監督独自の哲学的な風味が加えられ、込められたテーマ性は一段と深いものであると感じられます。
宮崎駿も本作のファンであり、単純なアウトラインに秘められた深遠なテーマ性という点で、彼の作品とも共通する部分があります。
何より素晴らしいのは、切り絵により表現された美しい作品世界であり、我々観客もハリネズミと共に幽玄なる世界に誘われます。
全体を覆う霧は、非常に細かい紙片を散りばめているようで、本作のために制作されたマルチプレーン・カメラの撮影により、独特の深みのある空間が構築されています。
日本的な美しさを追求したようで、水墨画のような白と黒の美しさも感じられます。
溝口健二監督『雨月物語』を初めて観た時のような感動がありました。
ほんの10分の体験ですが、私にとっては、ここ数年間で一番の映像体験と言っても過言では無いです。
あまりの素晴らしさに、続けて2回観てしまいました。
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⑦『道成寺』(1976)
日本を代表する人形アニメ作家・川本喜八郎の作品。
チェコスロバキアにてイジートルンカに師事した川本は、帰国後にフリー作家となり、能や狂言を原作とした人形アニメを作ります。
中でも『鬼』『道成寺』『火宅』の3作は「不条理三部作」と呼ばれ、日本的なおどろおどろしさを持つ、川本の代表作です。
その中でも、特に本作は凄味があり、まさに鬼気迫るという表現がピタリと来ます。
男に執着する女の怨念が凄まじく、長い髪を振り乱しながら走る姿にはゾッとさせられます。
ジートルンカ作品同様、人形の表情を変えずにカメラアングルとライティングで表情を出し、日本人形が本来持つ怖さを引き出しています。
全編通して、人物が右から左へと移動していく様など、背景も含めて、古い絵巻物を紐解いているような感覚を味わえます。
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⑧『おこんじょうるり』(1982)
アニメーション作家・岡本忠成の代表作。
様々な手法のアニメを手掛ける岡本忠成ですが、本作は人形アニメです。
昔むかし、イタコの婆さまが住む家に、腹を空かせた狐が忍び込む。
哀れに思った婆さまは、狐に食い物を恵んであげる。
恩に着た狐は、お礼に婆さまに浄瑠璃を聞かせる…。
孤独を抱える婆さまと狐の"おこん"、一人と一匹の交流と心の絆の物語が、可愛らしく温かみのある人形で表現されます。
ホッコリしながら、最後はホロリと泣けます。
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⑨『木を植えた男』(1987)
カナダのアニメ作家フレデリック・バックの代表作。
草木も生えない荒野にたった一人で植樹を続ける男エルゼアール・ブフィエの物語で、彼の活動により森が再生していく様が描かれます。
フィクションですが、作中の人物や物語はまるで実在するように語られ、現実味が感じられます。
映画公開後のカナダでは大規模な植樹運動が行われたようで、作品が現実社会に大きな影響を与えました。
菊池寛恩讐の彼方に』のような男の執念を感じさせる話が好きで、なおかつ環境保護という題材にも興味があるので、本作はまさに好きなお話でした。
全編に渡るフレデリック・バックによる色鉛筆のスケッチも凄味があります。
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⑩『琴と少年』(1989)
中国のアニメ制作会社・上海美術映画製作所によるアニメ映画。
その制作技法はまさに「動く水墨画」であり、中国の絵巻物が動き出したような感覚です。
美しい琴の音、悠久なる河の流れ、老人から少年へ(そしてまた次代へ)受け継がれていくもの…。
作品全体から仏教的回帰思想が感じられます。
こんなずっしりした芸術アニメを観てしまうと、暫し商業ベースのアニメを観る気がなくなります。
近年の中国アニメみたいに、日本アニメの後追いをしなくても、ちゃんと中国独自の素晴らしいアニメがあるじゃありませんか!
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